「ナチュラル・ウーマン」などで知られる米国のシンガー・ソングライラー、キャロル・キングの若き日を、歌手として抜群の歌唱力を持つ水樹奈々=写真右と平原綾香=同左がダブルキャストで演じている。米ブロードウェーで3年以上ロングランが続くミュージカルの日本版だ。
描かれるのは16歳から29歳まで。夫で作詞家のジェリー(伊礼彼方)と他の歌手のために曲を書いていたキャロルが、心を病んだ夫との別離という苦境を経てソロ歌手として再出発する。
プロデューサーのドニー(武田真治)のもと、曲作りをするキャロルとジェリー、そして親友でライバルの作詞家・作曲家コンビのシンシア(ソニン)とバリー(中川晃教)にまつわる短いエピソードをテンポよく見せる。
印象的に描かれるのは楽曲が生まれる瞬間の新鮮な感動だ。ある曲をドニーに初めて聞かせる時、キャロルが感極まって歌えなくなるとジェリーが優しく声を合わせる。またシンシアとバリーが起死回生の曲名を思いつくと場面転換して曲を提供されたグループが格好良く歌うという具合に。
水樹と平原の演じる姿もフレッシュだ。水樹は多感な若者の心の揺れを繊細につづる。対する平原は折々の心の動きを豊かな歌声に変換していく。タイプは違えど前向きなキャロルが成長し、歌声を深めていく過程をナチュラルに演じた。
ソニンや中川、そしてドリフターズ、シュレルズら名グループを演じた出演者たちの歌声が見事。美しく力強い旋律に満ちたキャロルの曲を心地良く聞かせた。全編を通じてさわやかさが感じられる舞台に仕上がった。脚本はダグラス・マクグラス。演出はマイク・ブルーニ。