■読売新聞にて劇評が掲載されました。

2017年8月8日(火)発行の読売新聞夕刊(文化面)にて、劇評が掲載されました。

評 ビューティフル(東宝) 
水樹と平原 フレッシュ

平成29年8月8日(火)
読売新聞夕刊 文化面

「ナチュラル・ウーマン」などで知られる米国のシンガー・ソングライラー、キャロル・キングの若き日を、歌手として抜群の歌唱力を持つ水樹奈々=写真右と平原綾香=同左がダブルキャストで演じている。米ブロードウェーで3年以上ロングランが続くミュージカルの日本版だ。

描かれるのは16歳から29歳まで。夫で作詞家のジェリー(伊礼彼方)と他の歌手のために曲を書いていたキャロルが、心を病んだ夫との別離という苦境を経てソロ歌手として再出発する。

プロデューサーのドニー(武田真治)のもと、曲作りをするキャロルとジェリー、そして親友でライバルの作詞家・作曲家コンビのシンシア(ソニン)とバリー(中川晃教)にまつわる短いエピソードをテンポよく見せる。

印象的に描かれるのは楽曲が生まれる瞬間の新鮮な感動だ。ある曲をドニーに初めて聞かせる時、キャロルが感極まって歌えなくなるとジェリーが優しく声を合わせる。またシンシアとバリーが起死回生の曲名を思いつくと場面転換して曲を提供されたグループが格好良く歌うという具合に。

水樹と平原の演じる姿もフレッシュだ。水樹は多感な若者の心の揺れを繊細につづる。対する平原は折々の心の動きを豊かな歌声に変換していく。タイプは違えど前向きなキャロルが成長し、歌声を深めていく過程をナチュラルに演じた。

ソニンや中川、そしてドリフターズ、シュレルズら名グループを演じた出演者たちの歌声が見事。美しく力強い旋律に満ちたキャロルの曲を心地良く聞かせた。全編を通じてさわやかさが感じられる舞台に仕上がった。脚本はダグラス・マクグラス。演出はマイク・ブルーニ。

(祐成秀樹)
― 26日まで、有楽町・帝国劇場

■毎日新聞にて劇評が掲載されました。

2017年8月17日(木)発行の毎日新聞夕刊(文化面)にて、劇評が掲載されました。

評 ミュージカル ビューティフル 
活気にあふれた舞台

米国のシンガー・ソングライター、キャロル・キングの半生が題材のミュージカル。ダグラス・マクグラス脚本、マーク・ブルーニ演出。

キャロル(水樹奈々、平原綾香)は16歳でプロデューサーのドニー(武田真治)に見いだされて作曲家デビューし、学生仲間のジェリー(伊礼彼方)と結婚。キャロルの作曲、ジェリーの作詞で作品を発表し出す。

友人でもある作曲家のバリー(中川晃教)と作詞家のシンシア(ソニン)のコンビと競い合いながら、ヒット曲が生み出されていく様子は活気にあふれ、ドリフターズやシュレルズなど当時の歌手にふんした出演者によるステージが楽しい。

仕事は順調に推移するが、日常生活も大切にしようとするキャロルと創作への刺激を求めるジェリーとの仲は破綻し出す。

水樹は前半でキャロルの繊細さを見せ、成功を勝ち得た後半との差異を印象づけた。平原はキャロルのいちずで前向きな性格を表現し、傷ついても立ち上がる強さを感じさせた。

伊礼は常にヒットを要求される重圧で壊れていくジェリーの焦燥を表現した。

中川とソニンはセリフの間合いが良く、人物を生き生きと描写。ばらばらになっていくキャロルたちと対照的な息の合ったコンビぶりを見せた。キャロルの母親ジニーの剣幸は軽妙かつ自愛を感じさせ、武田が調子のいいプロデューサー像をうまく見せた。

【小玉祥子】
東京・帝国劇場で26日まで

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