物語はある画家のアトリエから始まる―――。
キャンバスに絵筆を走らせているのはその主、
「先生、お茶が入りました」
その声がけに絵筆を止め、家政婦の
「ところで先生、こちらの作品にはいつおかかりになるんですか?」
好子の目線の先にはまっ白のキャンバスが置かれている。
「愛、ねぇ・・・」
女性には不自由しない恭一郎だが、“愛”をテーマに、と引き受けたこの作品にはなぜか取り掛かることができなかった。
そこには誰にも言えない、言ったところで信じてはもらえないだろうある理由があったのだ。
と、ドタバタとうるさい足音が彼の思考を遮る。
「禅定寺恭一郎さんですか?」
息を荒げながら一人の若者がアトリエに踏み込んでくる。
「
訳が分からない恭一郎と好子、しかし冬馬と名乗る青年は怒りの表情を携えたまま、恭一郎をまっすぐ睨みつけるのだった―――