今回は、明治座からもほど近い距離にあり、緑に彩られた素敵な外観を持つ「HAMACHO HOTEL」の1階にあるダイニングバー《SESSiON(セッション)》に、上口耕平さんと伺ってきました。
上口さんは明治座への出演機会も多く、また所属事務所も近くにあるということで、この近辺は「すごく馴染みがあります。このあたりに来ると落ち着きます」とのこと。「静かで綺麗、しかも下町の良さがありながら洗練もされている。いい街ですよね」。
《SESSiON》のコンセプトは「街のダイニング(食堂)」。ホテル内のレストランらしい上質さがありながらも、アットホームでほっと落ち着けるお店です。運営はブルーノート・ジャパンということもあり、店内BGMも洗練された音楽。第2・第4水曜にはライブ演奏もあるそうです。
(※第2水曜はチャージフリーのピアノライブ、第4水曜はミュージックチャージ2,000円で、ピアノ+αのライブ。演奏のない週もあるそうなので事前に公式サイト等でご確認を)
夜になると少し雰囲気が変わり、おしゃれな空間になるそうですが、ランチタイムはビジネスマンらしき方からお子さん連れの方まで、幅広い層のお客さんが思い思いにくつろいでいます。
上口さんが召し上がったのは2,000円(税込)のランチコース。
メインディッシュを〈浜町ナポリタン〉か〈特製オムハヤシ〉で選び、サラダ、スープ、本日のデザート、ドリンクが付きます。
ほかにもお手頃価格のワンプレートランチから、もう少しボリュームのあるコースまで色々とメニューがありました。
まずは〈自家農園サラダ〉。
「意識してサラダを食べたのが久しぶりなのですが……率直に、美味いです! ドレッシングは酸味がきいているのですが、その酸味がコーンの甘さを際立たせています。コーンおいしいな……。野菜もけっこう色々な種類のものが入っていますね。香草の香りがとてもいいです。花びら(エディブルフラワー)が入っているので彩りも可愛い」(上口)
野菜は、埼玉にあるお店の自家農園のものを使っているそうですよ。
スープは〈かぼちゃのスープ〉でしたが、これもとてもおいしい。かぼちゃの甘い風味となめらかな舌触りが品良く、上口さんは「ケーキみたい」とユニークな表現をされていました。
そしてメインの〈浜町ナポリタン マスカルポーネチーズ添え〉。
運ばれてくるなり「うまそーう!」と笑顔を見せる上口さんです。
「僕、ナポリタンがもともと好きなのですが、同時にトマトクリームパスタも大好きなんです。このナポリタンは、マスカルポーネを混ぜるとトマトクリーム感が増して、ナポリタンとトマトクリームパスタの両方のいいところ取りみたいです」(上口)
具材はソーセージに玉ねぎに……と、レトロでオーソドックスなナポリタンなのですが、上口さんのおっしゃるように、マスカルポーネチーズがきいて、この空間にふさわしいおしゃれさが加わります。新感覚のナポリタンといった感じ。
パスタはキタッラという、断面の四角い太めの麺。生麺なのでモチモチしています。
「麺がモチっとしているから、太くてもソースとよく絡みますね。味付けもほどよい甘さで、これは女性の方もお好きなんじゃないかな。本当においしい」(上口)
デザートは〈ミルクプリン〉でした。『屋根の上のヴァイオリン弾き』の主人公・テヴィエは牛乳屋ですから、これも縁!?
「舌触りは杏仁豆腐のようにまったりしていますが、甘さが控えめ。トッピングのクリームはコーヒー味かな?さっぱりと食べられますね」(上口)
スタッフは〈大人の濃厚ティラミス〉980円(税込)と〈バスクチーズケーキ〉1,180円(税込)もいただきました。
味見をした上口さんによると「チーズケーキおいしいです、かなりおすすめ! 濃厚だけどチーズのちょっとフルーティな風味もあって、さっぱり食べられます。そこにバスクチーズケーキならではの焦げが、カラメルっぽい苦味も加えてくる。しかもこのクランブルがおいしいですね! しっとりしたケーキの中でたまにサクっとした食感がくるのがいい。ティラミスも甘さ控えめ。コーヒーの苦みがいいですね」。
……上口さん食レポお上手ですね。
なお、お店の方にお聞きしたところ、チーズケーキも自慢の品とのこと。
お店で出されるデザートはちゃんと店内でパティシエが作っています、とおっしゃっていました。
さて、上口さんは『屋根の上のヴァイオリン弾き』との関りは長く、今年で12年目。
最初に出演したのは2013年、フョートカ役でした。2021年からはモーテルを演じています。
「キャストが変わると雰囲気は変わるのですが、同時に作品の芯にある部分、“骨”の太さも感じるんです。大事なもの、伝えたいメッセージはずっと守られているんだな、と思います」(上口)
演じるモーテルについては「大好きな役です。……というより、大好きな人物です」と語ります。
「初めて僕が出演した時のモーテル役は植本純米(当時は植本潤)さんだったのですが、コミカルなところもあり、決して強い男ではないこのモーテルが、僕の目にはとてつもなくカッコ良く映りました。気弱だし、頼りないところもあるし、自分の思いを表現するのも上手くない。でも芯にある強さがまっすぐで美しくて。すごく魅力的な男性だなと思ったんです。
さらに、彼の歌う『奇蹟の中の奇蹟』という楽曲も、なんて美しい歌なんだと思います。モーテルは敬虔なユダヤ教徒で「自分が今強くなれたのは神様のおかげだ」と喜び、神様が起こした様々な奇蹟を歌った最後に「でも一番の奇蹟は、あなた(ツァイテル)が僕の前にいること」と歌う。とても素敵ですよね。初めて聴いた時、めちゃくちゃ感動しました。彼のまっすぐな感謝の気持ちをキラキラと爆発させて表現することが目標です。この曲は運動量も多く、色々な情報が込められていて、その中で大事なことをきちんと伝えるというのはハードルが高いのですが、役者として挑戦し続けたいです」(上口)
その表情からも、本当にこの作品がお好きなのが伝わってきます。
改めて『屋根の上のヴァイオリン弾き』の魅力は?
「演出の寺﨑秀臣さんにお聞きしたのですが、この作品はユダヤ教とロシア正教、それぞれの立場で生きる人たちのアイデンティティがぶつかる物語で、それをストレートに表現しようとした初演では少しお客さまに響いていなかった感触があったそうです。そこを(初演のテヴィエ役の)森繁久彌さんが、一家族の話をフィーチャーしようとおっしゃったらしい。まさにそれだと僕も思います。ドラマとしてはとても大きいし、(ユダヤ人差別という)僕らがなかなか日常で触れることのない世界です。でもその中にある家族の話はとても身近なもの。心情や細かいニュアンスは僕らの日常に近い。年齢を重ねるごとに、とても沁みてきます。
また、振付も素晴らしいんです。オリジナルの演出・振付は『ウエスト・サイド・ストーリー』で知られるジェローム・ロビンスさんなのですが、彼の振付は細部まで言葉が込められているんですよ。日本版はオリジナルの振付を基に真島茂樹さんが作ってくださったものですが、冒頭の『伝統の歌』なんか、本当にすごいです。円というものを大事にした作品なのですが、バランスがどこかずれたら円は崩れますよね。でも、それぞれが個々に生活する中で自然とバランスが保たれている、というのを、みんなが引っ張るでもなく押すのでもなく、手を繋いで歩き、「しきたり」と歌うことで表現している。しかもこれだけのメッセージが込められているのに、ユニークだし、キュートでもあるじゃないですか。この見事さは、本当に感動します」(上口)
さらに深みを増すであろう、上口さんのモーテル役に期待です!
そしてお店はとても居心地が良く、カフェ使いもできますので、ぜひ『屋根の上のヴァイオリン弾き』の観劇前後に寄ってみてはいかがでしょう。
【メニューや価格、サービスなどは、2025年1月時点のものです】
(取材・文・撮影:平野祥恵)
取材協力:一般社団法人日本橋浜町エリアマネジメント
https://hamacho.jp/