今回は、明治座から人形町駅方面に徒歩8分ほど歩いたところにある《焼肉専科 肉の切り方 集会所》を、神田恭兵さんと訪ねてきました。
通りの角にある2階建てのお店で、屋根の上のそびえ立つ牛の像がランドマーク。
座席数も多く、個室も完備。観劇帰りにお友だちとワイワイおしゃべりしながらご飯を食べるのにも良さそうです。
このお店の特徴は、滋賀県近江市場で競り落とした最高の近江雌牛を一頭買いしていること。
そして店名のとおり、徹底的に肉の切り方にこだわっていること、です。
まずは〈切り方特製サラダ〉950円(税込)、〈キムチ盛り合せ〉980円(税込)、さらに〈炙り巻き寿司〉970円(1貫/税込)をいただきます。
〈炙り巻き寿司〉は近江牛の霜降り肉+生ウニ+キャビアのコラボ!
これはテンションが上がってしまいます。神田さんも「俺も写真撮ろう……」と撮影。
「海と山の幸、贅沢ですね! これは見た目だけで嬉しくなる。……肉が舌の上で踊ってるみたいです! お肉も柔らかくて……ウニのとろける食感とお肉のとろける食感、なめらかさが二段階で来ます」(神田)
そしてメインは〈近江牛食べ比べ 特選8種盛り〉3,650円(1人前/税込、写真は4人前)をいただきます。
この日提供された部位は厚切タン、イチボ、ザブトン、ランプ、ウチモモ、ナカニク、クラシタ、ブリスケ。
店員さんが「イチボとザブトンは霜降り肉です。塩が振ってあるのでできればそのままでお肉の味をお楽しみください。中段の赤身のお肉はそのままか軽くわさびをつけるかポン酢で。筋肉質なので焼きすぎると歯ごたえが出すぎてしまいます。あまり焼きすぎないようにご注意ください。下段の2種は軽くタレがついていますのでそのままで」……等々、丁寧に教えてくださいました。
さらにオススメの食べる順番をお伺いしたところ「当店で使用している近江牛はA5で、霜降り等級のBMSは1から12ある中、10から12しか使いません。つまりサシがしっかり入っているので、霜降りのあとに赤身を食べるとボヤけて感じてしまうかもしれないので、厚切りタン、赤身、霜降り、味付けのお肉の順をオススメしています」とのこと。
ということで、オススメどおりまずは〈厚切りタン〉から!
「うまい! タンらしいしっかりした噛み応えがあるのに噛みやすい。この食感は初めてかも」(神田)
赤身肉の〈ランプ〉では
「赤身なのに、意外なほど脂もしっかり主張している。これはおいしいですね。口の中であっという間になくなる……」(神田)
その後も〈ウチモモ〉では「ステーキみたい」、〈ザブトン〉では「これはすごい、こんなに綺麗な肉あります……? めっちゃ柔らかいし、味が濃ゆい! パンチ力がすごい」、〈クラシタ〉では「溶ける。でもお肉の味がしっかり味わえる、最高」等々、丁寧に食レポをしてくださった神田さんです。
それにしても、肉質もいいけど、やっぱり“切り方”だよ、と感心する神田さんとスタッフ一同。
よく見るとかなり細かく隠し包丁が入れてあります。しかも、部位によって切り方がそれぞれ違っています。
「肉は全て筋肉で構成されていて、部位によって筋肉繊維の入り方が違います。それを断ち切るようにカットし、口に入った時の食感が柔らかくなるようにしています。すべてのお肉にカットを入れていくので、一般的な焼き肉屋さんより、お肉の準備にかなり時間がかかります」と店員さん。
また、カットをすると空気に触れる面積も増えてしまい、味が落ちてしまうので、基本的には注文が入ってからカットしているそう。
〈カルビクッパ〉790円(税込)もおいしくいただきました!
さて、神田さんは『屋根の上のヴァイオリン弾き』ではロシア人青年・フョートカを演じています。
「2017年に初めて出演しましたので今年で9年目、3回目のフョートカです。出演するたびにこの作品のエネルギーに圧倒されますし、なぜこんなに愛されるのか、その意味がわかってきます。日本版は“家族”というものにフォーカスしているのでそこが日本人にとって響くのだろうと思うし、一方で昨今は、ウクライナとロシアの戦争があり、本作で描かれている背景をリアリティもって感じられる世界情勢になってきている。50年以上前に作られた作品ですが、現代に訴えかけるメッセージや作品の本質をどんどん掘り下げていけるのは、役者として光栄なことだなと思います。
正直なところ、この世界情勢の中でロシア人役を演じる重さも感じていますが、今だからこそ見えてくることもあると思っています」(神田)
フョートカという役柄に関しては「チャヴァと出会い、ユダヤ人迫害を目の当たりにし、チャヴァの父であるテヴィエに会いに行き、駆け落ちをし、最後にまたテヴィエに会いに戻ってくる……。まわりの状況がどんどん変わっていくのですが、描かれる時間としてはさほど長くないので、自分たちで心境の変化を埋めていかなければならない。さらに言葉数が多いわけではないので、短いやりとりのなかで心の動きを丁寧に描かないと表面的なお芝居になってしまいます。すごく難しいです。未だに正解を探し続けています。今回も3回目にして“実はこういう意味ではなかったかも”“余計なことを考えすぎていたかも”と考えることもあります。計算しすぎるのもよくないなと思うので、相手役のチャヴァをはじめとするまわりの人々に寄り添いながら芝居を作っていきたいです。目の前にいる人とともに芝居を作り上げていく、というのは最近特に感じていることなので、そういう経験ができるのはとても楽しいです」(神田)
真摯に作品と役に向き合っていらっしゃるのが伝わってきました。
《肉の切り方》は、実は明治座さんが経営しているお店。
……ということを取材半ばで聞いた神田さん、「責任重大……」とちょっと緊張されたようですが、でも忖度なくおいしかった、とおっしゃっていましたよ!
取材後、「満足感がすごいです、楽しかった~」と笑顔で稽古に向かって行った神田さんでした。
【メニューや価格、サービスなどは、2025年1月時点のものです】
(取材・文・撮影:平野祥恵)
取材協力:一般社団法人日本橋浜町エリアマネジメント
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